関東にきて驚くのは、ソメイヨシノの数と、その枝ぶりだ。
山と海の間で過ごした私は、桜といえばヤマザクラで、もともと白い花を咲かせるソメイヨシノは見慣れない。
桜の季節になると、まじまじとソメイヨシノを観察して、どうしても接ぎ木で育った違和感を見つめてしまう。
ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの雑種で、一本の木から接ぎ木を繰り返して増やされたらしい。つまり、クローン。自家不和合性と言って、受粉しても種子ができない。だから、遺伝子が同一で、一気に開花するわけだ。
接ぎ木の違和感は、木の幹から突然生えているように細い枝が出ていることから感じる。よくみると、こんなとこに生えたか、と思うくらい小さな目がいたるところにある。
もとの木に接ぎ木をして増えたソメイヨシノを見ると、もともと根を張って木となったサクラが気にかかる。なんだか、幹にぶら下がってこんなに増殖し、ごめんねって気持ちになる。一つの言動に群がって、あーでもないこーでもないと撒き散らしてる人間みたい。
できることなら、ちゃんと自分で根を張って、ささやかでも花を咲かせられるといいのだけれど……ね。