放課後の渡り廊下

教育に関してあれこれ迷い悩みながら書いています。

新潟県立歴史博物館編「あ,コレ知ってる! はにわ どぐう かえんどきの昭和平成」

縄文ブーム再来中なので,縄文時代に関する書籍を読み漁っている。

その中で,面白くて一気読みした1冊を紹介したい。 

あっ、コレ知ってる!はにわ どぐう かえんどきの昭和平成

あっ、コレ知ってる!はにわ どぐう かえんどきの昭和平成

 

この本では「歴史」のストーリーとして,埴輪・土偶火焔土器にまつわるエピソードが説明されている。岡村太郎の縄文発見とか、オリンピックや国体との関連など、縄文文化にまつわる知られざるエピソードが詰まっている。考古物の写真や発見当時の新聞記事の画像が盛り込まれる構成も面白い。

縄文時代に関する本を読んでいると,考古学の専門的な用語が並ぶ無機質なものと,美術的価値に比重を置いた縄文愛重タイプの書籍が多い。元々縄文文化に興味がある人はどれも面白いと思うのだけれど,正直興味のない人にとっては過剰な表現も多く,最後までついていけないなあと思う本もある。

その中で,この本は歴史博物館特別展の図録を兼ねていることもあり,昭和から平成にかけて縄文文化遺産が人々にどのように受け入れられていったのかがストーリーとして読むことができる。キュレーションが優れていると言えばいいのだろうか,オリンピックというタイムリーな話題と縄文文化との関連についても興味深いし,マンガの中で描かれる縄文文化など,日本人が縄文文化をどのように受容してきたのかを知ることができる。

 

個人的には,縄文遺跡の発掘が大規模な開発事業とセットで展開することを思い出したことも衝撃として大きい。私の知る限り,土を掘り起こす作業のきっかけは,そこにある自然を一度解体することと併せて起こる。住民の畑作業で発見された中空土偶などは稀で,発掘調査が終わるとそこには市民にとって便利なバイパス道路が建設されるなど,縄文文化の発見はその土地の変化と共にある。 

歴史文化遺産としての縄文文化は地域振興と併せてこれからも多くの人によって発信されていくだろうが,その受け止め方は一様であってはならないと思う。