矢島新(2019)「ゆるカワ日本美術史−ヴィジュアル版」
日本美術史を「ゆるカワ」という観点で概説した新書。どこまでを「ゆるさ」「かわいさ」として括るかは主観が伴うが,書かれないものを思いながら読むと「ゆるカワ」には「リアルさ」「壮大さ」といったものが欠けていることが見えてくる。
縄文時代の土偶は,本書の中で「ゆるカワ」の起源として読むことができる。「きもカワ」寄りの指摘もあり,読みながら最近の少年漫画でよく出てくる不気味な物体「異形」の特徴も既に見られるような気がしてきた。日本文化における人体表現は本当に不気味だ。
山岡信貴編(2018)「PHOTO BOOK ハマる縄文!?」
「縄文時代が実はどうかなんて,どこかの時点でどうしてもわからない。」(p.94)
この実感は,縄文について知ろうとすればするほどついてくる感覚だ。どの本を読んでいても,どの土器や土偶を見たとしても,出会った人の感覚の鋭さが際立つばかりで,結局のところ私たちの想像の域を越えることができないのではないか,と思ってしまう。
私たちは土器や土偶を見て,何を思い浮かべるのか。その問いを真っ向に表現した1冊。
こんだあきこ・スソアキコ(2018)「おもしろ謎解き『縄文』のヒミツ」
図解まんがで圧倒的にわかりやすい。また,4人の専門家にインタビューする形式で構成されていて,多角的に縄文について知ることができる。各学問領域の研究方法の違いも見えておもしろい。
- 分子人類学(わたしたちのDNAの中に縄文人はどのくらい残っているのか?)
- 先史生態学(縄文人は何を食べていた?)
- 植物考古学(縄文時代の編みかごから何がわかるか?)
- 考古学(土偶に秘められた縄文人の願いとは?)
それぞれの分野で明らかになる問いを,具体的な研究方法の概説も交えながらまんがで解説している本なので,研究ってどんなものなのかを知るきっかけにもなるかも。土偶の図解,博物館・資料館の紹介,参考文献などの情報ももれなくあって,読後の調査活動にも役立つありがたい1冊。
タマと佐藤国男(2018)「タマと博士の縄文講座 土器と土偶の謎を解く」
マニアックな人向け(笑)。「オツベルと象」や「銀河鉄道の夜」などの宮沢賢治作品の版画絵で有名な著者。版画絵は函館の街中で時々展示会があり,何度も見たことがあったが,佐藤さんがこんなにも縄文について詳しい人なのかと初めて知った。縄文文化について並々ならぬ情熱が感じられる1冊。