文化祭を前後して,生活体験文の授業に入りました。生活体験文とは,おそらく綴り方教育の流れの上にある実践なのだと思いますが,私が勤務する地域では多くの中学校で夏休みの課題として取り組まれているものです。特別にミニレッスンをすることなく,宿題として作文を読みました。
ジャンルとしての課題はあって,単なる説明文になってしまうなど,気になることは多々ありました。ですが,課題を見ようとするとキリがないですし,課題を指摘したところで「作文」に対するモチベーションが下がってしまうのは子どもたちの様子でわかります。とにかく良いところを見つけてフィードバックすることを心がけました。
授業が終わって,「先生はなんでそんなにフォローができるんですか!?」と聞いてくる生徒もいました。こちらも頑張っていることをよく見ています。笑
どんな作文も,その人のきらりと光る表現があったり,構成が優れていたり,聞き手がわかりやすいように噛み砕いて表現する工夫があったりします。原稿用紙半分しか書いていなくても「端的に内容をまとめましたね」「〇〇という言葉に筆者の感情が凝縮されています。この言葉があるかないかでは読み手の受け取り方が変わります」なんて言ったりします。笑 フィードバッグできない作文はないわけですね。この辺りは『一言作文』の実践で培ったスキルなのかなと振り返る瞬間がありました。
人間関係も少しずつ見えてきているので,発表後にコメントをし合ったり,他の人の内容と比較してみたりする場面も設定しました。発表の仕方が優れている人の,「何が巧みなのか」分析してみるのも面白かったです。
一番のハイライトは,休みがちな生徒たちの活躍でした。秋休み前の終業式だったため,通知表を受け取ることを目的に登校した生徒がいます。秋に差し掛かって,勉強の内容についていけなくなる生徒,人間関係に悩み出す生徒が見えてきていました。でも,クラスの約30名の体験を持ち寄って耳を傾けていると,それぞれの知らないところでいろいろな体験を積み重ね,悩みや葛藤を抱えながらみんな暮らしているんだと知ることになるのです。
みんなの発表を聞いて,気持ちが楽になった。
勉強が苦手なのは自分だけじゃないって知った。
ある生徒はこんな振り返りを書いていました。
表現することで自分とはどういう人間なのかを考え,それを発表することで,実は自分だけが悩んでいるわけではないことを知る。そこに作文発表の価値があるのだと思う1日でした。