放課後の渡り廊下

教育に関してあれこれ迷い悩みながら書いています。

コロナ危機の中での対話と挑戦ー11月の振り返り

迫り来るコロナ危機の中で

 北海道の新型コロナ感染者が急増する中で,現実的な対応に追われる11月だった。

 実際に近隣の小中高等学校で陽性者が発覚して学級・学年閉鎖が起こり,家族が陽性者の場合どうするか,学年閉鎖・学級閉鎖の判断をどの段階でどのような基準でするのかなど,検討しなければならない事案が一気に沸いた。保健所からの対応を初めて具体的に見聞きすることも場面も多くなり,迫り来る問題に議論しなければならない時間が増えた。

 感染不安も高まり,出席停止扱いで欠席をする生徒も見られるようになる。一方で,休んでいる間の学びの保障をどのように行っていくか,もし受験期で同じようなことが起こった場合,どのような対処を考えておかねばならないか……不十分ながらできることはなんだろうかと考える時間も多くなる。

 ひとまず,今は個別の対応を丁寧に,一人一人と対話をしてどんなことに困っているのかを共有することから始めたい。私たちができることはこのくらいでしかない。

 学級は,再び給食が無言となったけれど,どんな学習活動もゼロにすることなく,安心して学校生活が送れることを優先しつつも,できることを考えて取り組んでいく。

 

 朝読書の時間もコロナ対応を考える本に手がのびる。切実だ。

 臨時休校後の対応がメインで,すでに学校再開している今ではすでに状況も変わっている部分が多いことを感じる。目まぐるしく状況は刻一刻と変わっているのだ。

 

懇談を通しての実感

 そのような中で,二者懇談,三者懇談が実施された。当初は感染拡大の恐れもあって中止にする判断も検討されたが,幸いにして近隣では一旦の落ち着きを見せたところで実施の運びとなる。それでも,懇談をキャンセルするご家庭や電話懇談を希望するご家庭も多く見られた。対面での懇談も,できる限り距離をおいて着席,極力短時間で終わり,間の時間に換気や消毒作業を徹底しての懇談となる。

 懇談内容としては学習相談が多いけれど,私に何ができるだろうかと自問自答する場面が多かった。懇談はとにかく聞くことから始まる。できることなら,「こんなんだったらまたやってもいい」と思ってもらいたい。単なる日頃の小言を言う会ではなく,一人一人のこれまでの成長や頑張りに焦点を当て,これからの活動を勇気づける懇談になったらいいなと願う。

 一方で,三者懇談は成績をテレビ画面に提示しての懇談。迫り来る進路選択を前に,現実だから仕方ない部分もあるのだけれど,少し心が冷える。自然と厳しい言葉が増える。ここ,マインドセットが必要だったなあと思う。前向きな,次の行動につながる懇談のあり方ってなんだろうかと考えさせられた。

 懇談日程が終わった週末に,大野睦仁先生と千葉孝司先生の研究会に参加する予定だった。このご時世なので会は中止となってしまったが,その分千葉先生の本を読み直す時間ができた。

WHYとHOWでよくわかる!  不登校 困った時の対応術40

WHYとHOWでよくわかる! 不登校 困った時の対応術40

  • 作者:千葉 孝司
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 単行本
 

 とにかくこの本で示される生徒と教師のやりとりが温かい。不登校対応に限らず,生徒との関わり方を考えるヒントとなる本である。肯定的な関わりが信頼関係を築くという当たり前なことを,具体的な教師の言葉を通して学ぶことができる。懇談から次の行動をどう起こしていくかのイメージを膨らませることができた。

 

新単元のチャレンジ

 国語科授業では,向田邦子「字のない葉書」で人物の描かれ方を学ぶ単元に進む。今回は定期テストもひと段落して,チャレンジ単元となった。生徒の現状の課題を洗い出すような,少し無謀なチャレンジでもあったが,今まで見ることがなかった生徒の一側面を見ることができた単元となる。

 具体的な展開として,コース別学習を実施。これは9〜10月に実施した「博士ノート」の単元の発展形で,今回は班ごとに分担して発表する形式を選択する。

 

keynote.hatenablog.jp

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  コースは次の4つで行った。

  1. 父の人柄と私の心情を表す言葉を中心にまとめる「人柄心情分析コース」
  2. 父の行動描写を中心にまとめる「行動描写分析コース」
  3. 父が主人公に送った手紙を再現する「手紙再現コース」
  4. 父と下の妹の再会場面を再現する「場面再現コース」

  前回はコースが多すぎたことが課題として感じられたので,今回は一つの学習活動にじっくり取り組む仕組みに変更した。「なってみる学び」の影響もあって,コースの一つには場面を再現する学習も取り入れてみた。

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 とはいえ,コロナ禍での学習活動とあって,一工夫必要となった。単純に演じるというよりは,再話のような紙芝居やペープサート,模型を使った表現も多く見られた。

 結果として,「なってみる学び」は初めての学習活動ということもあり,イメージを持つまでに時間がかかってしまった生徒が多く見られた。これは手引きの問題もあろう。

 また,リハーサルの価値をあまり理解していない生徒は,「何度も繰り返しやってみる」ということができず,座学で悩む時間が多すぎるという課題が見つかった。 「やってみる中で気づく」ことは体験の中で獲得していく価値で,たくさんの失敗を重ねていくうちにブラッシュアップされることが,生徒の学び方として浸透していくにはどうしたらいいのかなと,学習過程で私が悩んだポイントだった。

 中学生ということもあり,人前でのパフォーマンスには多少のハードルもあった。チャレンジバイチョイスとはいえ,評価の側面もちらついてしまう中学生には葛藤の多い学習活動だったのかもしれない。

 それでも,たくさんの学習課題が見つかったのはよかった。一斉指導の中では見られない,一人一人の工夫や学習活動を行う上での困難をより強く認識することができた。また,今年度初めての発表形式での授業だったが,グループでの協調性や相手の気持ちに寄り添ったコメントと批評など,思いがけない生徒の精神的な成長の場面も感じられる単元となった。

 コロナ禍での対話を伴う学習活動は今後も慎重にならざるを得ないが,関わりを持ちながら学ぶことの尊さを改めて実感する単元であった。