放課後の渡り廊下

教育に関してあれこれ迷い悩みながら書いています。

久しぶりの合唱コンクールは何が変わったか?

 私が暮らす地域では,今日,文化祭という学校が多いようです。

 初任から生徒会を担当してきた私は,この季節が一番の繁忙期だと思って過ごしてきました。特に,生徒会企画でどんなオープニングセレモニーをするのかが難問でした。すぐには良い案が浮かばないので,結局本番ギリギリまで修正・準備をして臨んできたわけです。計画通りにはいかない,学校イベントの醍醐味でもあります。

 今年は学校における立場がいつも通りではなかったですし,そもそも文化祭自体の開催がコロナ禍以降行えていなかったので,合唱コンクールならではの言葉や感覚が久しぶりに蘇ってきました。もちろんマスクをしての合唱練習は,子どもたちの口の動きが見えなかったり,発声により苦しくなってしまったり,さまざまな困難があります(逆に,歌ってない子が目立たないということも起こります…笑)。感染拡大防止の観点で,一人一人の間隔を空けての指導をすると,やはり周りの声が聞きにくいと言った子どもたちの声も聞こえてきました。

 それでも,毎日1時間の合唱練習をどのように運営していくか,音程の取りづらい男声やアルトパートの練習でどんな工夫ができるか,ソプラノの声質をどう作り上げていくか,サポートするための方法はいくつもあったように思います。なんと言っても小学校から含めてこの3年間まともに歌ってこなかったので,かつて学んだ本を思い出しながら,教えられることは幾重にもあるなぁと思う,そんな状況でした。

 国語科としては,やはり曲の言葉に着目してもらいたいという思いがあり,歌詞を国語の授業で朗読して,問いを立てて話し合う授業をしました。あるクラスでは,とことん問い立てして,その中で重要な問いについて話し合いました。またあるクラスでは,合唱係が書いた歌詞の模造紙を前面に貼り,何度も繰り返されるフレーズに注目して吟味しました。この短期間で歌い方に集中してきた生徒は,「初めて歌詞の意味を考えた」と振り返る人が少なからずいます。

 そして,今年はたまたまあるクラスの音楽の授業にも参加させてもらうこともできました。そこでは音楽の先生が言葉に着目して指導されているのを知ります。音楽科としての専門的なアプローチではどういう表現力の指導ができるのかも学ぶことができました。

 正直に話すと,合唱コンクールのようなイベントは生徒も教師も,自分たちが思った以上にエネルギーを費やしてしまうため,前後の日常に支障が出ることも否めません。しかし,日常生活では見ることができないあの子の姿や,一つの課題に対して教科を超えた学習の場が生まれたのも事実です。