放課後の渡り廊下

教育に関してあれこれ迷い悩みながら書いています。

獲得型教育研究会夏のセミナー2019

 昨年に引き続き,獲得研の夏のセミナーに参加しました。

keynote.hatenablog.jp

 3回目?4回目? だんだんと過去の記憶があいまいになってきました。笑

 

学習者の「もっと書いていいですか」

オープニングは定番「あっちこっち」,渡辺淳先生の基調提案,そして小宅峻太さんの実践報告がありました。

実践報告は写真が多用されていて,学習者の成果物や学習過程が示されているものでした。最も印象に残ったのは,マインドマップの活用事例です。学習者が予習で調べてきたことを黒板に書き込む姿が画像で示されました。参与型の板書事例はよく見ますが,注目すべきは学習者の反応です。報告によれば学習者の「もっと書いていいですか」という反応があったそうで,アクティビティ中の反応をどれだけ拾って活動を分析しているかに気づかされます。先生の見取りがすてきでした。

ちなみに,この後のワークショップでも,高尾隆さんが参加者の何を見ているかを話している時に話題になりました。

 

役に仮託するからこそできる表現

 午前のワークショップは高尾隆さんの「教育プレゼンテーションはじめの一歩」。

教室はスクール形式で座学できる場と,アクティビティができるフリースペースと両方が1室になる会議室だったこともあり,落ち着いて話を聞く時間とわいわいやってみる時間が交互に構成される流れになりました。

 

ワークショップ後半はコア・アクティビティを「ごんぎつね」で体験する内容でした。

学びを変えるドラマの手法

学びを変えるドラマの手法

 

ストーリーを追いたい私は,テキストがないとぼやっとしてしまうので不適応をおこしていました。ごんや兵十が出てくるのですが,どの瞬間のごんなのか,時間軸がはっきりしていないと不安になります。しかし,フリーズフレームで村の一部になったりするのは,物語を自分の中で立ち上がらせることにもなり興味深い体験となりました。

 

もっとも刺さる場面になったのは,自分の座席に戻ってから高尾さんが自分を語ることの難しさを話し始めた時です。

自分とは何かを考え始めたばかりの時期に,自分の好きなものや興味のあるものを題材に表現するのは酷であるという話でした。大人は乗り越えてしまったから簡単に思えますが,自分が醜く思えたり自信がなかったりする時期に,自分と向き合うのは確かにしんどいかもしれません。

 

この話,実は高尾さんから聞くのは初めてではなかったのですが,いざ自分が中学生に何を求めていたのかを重ねてみると,ぞわっとしました。

実際に学習活動で自分の好きな物を題材にして書くことを,学習意欲の喚起だと信じて活動を設定していた場面があったわけです。

ぼくのニセモノをつくるには
 

もちろん「自分で決める」を大切にすることを決意した瞬間に自分という存在と向き合わざるをえないし,自分を表現できる力も必要な力で,いつかは乗り越える必要があるのだと思います。

だけど,実際に自分自身が学習の障壁になる場面は確かにあります。その時にフィクションの力を学びに活かす視点があるのとないのとでは,全然違ってくるのですね。自分の課題設定が真面目過ぎるというか,直接的すぎるというか・・・もっと比喩的に物事を捉えたいなと思った瞬間でした。

 

その他に,おもしろかったのは「パックマン」!(名前だけ聞いてもわからないゲームです)。ポイントは「競争」でした。競争をあおる系のゲームは,たしかに思春期の学習者にも受けが良く,余計な検閲を待たずにからだを動かすことになって一気に場が温まります。国語の授業で辞書引きゲームに熱中する中学生を思い出しました。

 

高尾さんのワークショップはいつも,インプロの活動になじめない参加者にも視線が注がれています。

 

自分の文脈に落とし込む

午後のワークショップは渡辺貴裕さんの「授業に活かすドラマ技法」でした。

『魔法使いのチョコレート・ケーキ』をドラマの手法で読むプログラムです。 

魔法使いのチョコレート・ケーキ―マーガレット・マーヒーお話集 (福音館文庫 物語)

魔法使いのチョコレート・ケーキ―マーガレット・マーヒーお話集 (福音館文庫 物語)

 

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 渡辺さんのワークショップに参加するのは2回目,だと思います。

keynote.hatenablog.jp
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善悪の回廊とか,ホットシーティングとか,それぞれの手法は体験したことがあったけれども,それらを「授業に活かす」視点をどう持つのかが今回の問題意識でした。

授業づくりの考え方 ―小学校の模擬授業とリフレクションで学ぶ

授業づくりの考え方 ―小学校の模擬授業とリフレクションで学ぶ

 

午前中に起こったことのリフレクションを例にして,そのリフレクションのあり方自体を自分の文脈の中でどう落とし込むのかが問われます。

 

今,自分が思っているのは,拒否感情とどう向き合うか,でした。

自分はこうして何度も体験してもいいと思えるくらい楽しい実感があるけれど,最初からいきなりなんでもできるわけでもないことを忘れちゃいけない。

「やりたくない」と思う自分もちゃんと大切にすることで,初めて自分の手に取れる形が見えてくるのだと思います。